ブラック企業対策の重要性

近年「ブラック企業」が社会的に大問題となっている。

ブラック企業が何たるかは、かなり多くの人が書籍でもインターネット上でも書いているので、ここでの説明は割愛する(読者の方には検索エンジンで調べていただきたい)。

 

私がここで言及するのは「何故ブラック企業対策が必要なのか」である。

以下の三点を挙げておきたい。

 

1、労働者の疲弊と消費の鈍化

2、行政の出動と財政

3、2045年問題

 

他にもあるだろうが、ざっと思い付くものを挙げたので一つ一つ述べる。

 

1、労働者の疲弊と消費の鈍化

 

ブラック企業の問題点の最大のものは労働者の疲弊であろう。

そもそも労働生産性を上げようとして安価で酷使しているはずだが、人間の背負える負荷には限界がある。その結果最終的には労働者は疲弊してその会社での生産性が落ちるか、最悪解雇や退職によって生計手段を失う。

労働者は消費者でもある。

労働者が仕事に見合わぬ低賃金だったり疲弊して退職したりすれば彼らからすれば消費に回す金などロクに無い。

そして世の中に金が回らず内需は冷え込みデフレになっていく。

 

2、行政の出動と財政

 

1で述べたようにブラック企業は労働者を疲弊させる。

そしてブラック企業から逃れられた労働者の行く先はどうなのかというと、これまた茨の道であることが多い。彼らは肉体的にも精神的にも相当磨り減っているのだ。次の会社への転職どころではなく、比較的長期にわたり無業者になるのも珍しくはない。また、ブラック企業がトラウマとなり働くこと自体が嫌になる人までいる。つまり、とある会社からだけでなく労働市場自体から退出する危険性がある。

とはいえ生きるためには金が無ければいけない。

失業保険が貰えないような人は行政による生活保護を貰っていたりする。

今の日本では少子高齢化や1991年以降の経済停滞により財政が年々厳しさを増している。

こうした中で失業者や自発的失業者を行政によって十分に包摂する余裕などあるのだろうか?

 

3、2045年問題

 

2010年代に入り、AI(Artificial Intelligence=人工知能)の発達は加速している。

銀行業務のワトソンやプロ棋士に勝ったAlphaGoは衝撃的なものであった。

そこで多くの人が思ったのではないか。「我々の仕事が無くなるのではないか」と。

 

あくまで私の予想であるが、人々の仕事を大量に奪うほどAIやAI搭載ロボットが普及するならそれらの機器を作る仕事やメンテナンスの仕事が大量に生まれるだろう(つまりAI自体が自動車産業なみに裾野が広い一大産業になる)しAIによって仕事が効率化し他の仕事が出来るようになるため人間の仕事は然程減らないだろう。

AIロボットをAIが作るのは相当高度なことでありそこまでの年月は相当かかる上、その技術が実用化してもかなり高価であることから導入は数十年後になると見てもおかしくないはずだ(その頃には日本の人口はかなり減っているから人間の仕事が減っても大丈夫)。

また、普及するということは特別な技術者でないような普通の人も機器を直したりできるほどシンプルにならなければいけないだろうということだ(これが単純労働に毛が生えたレベルのメンテナンス作業者の雇用を生むと考えた理由)。特別な技術者やプログラマしかロボットやAI機器の中身をいじれないならそもそもあまり普及しないし雇用を大量に奪うほどにはならない。

未来のことは分からないし今私の述べたことも後で「間違いだった」となるかもしれないが、それはそれでAIによる雇用の侵食を重く見た政府がAI利用の制限を企業に課す法律や人件費の割合を一定割合以上にせよと義務付ける法律を作るかもしれない(大量の失業者は財政を圧迫するため)。

 

ただ、最悪のパターンを考えねばならない。

企業や政府が何も対策をとらなければ(つまり今のシステムの延長線なら)日本では近い将来に49%の仕事が無くなるとの懸念がある。

また、全世界的に見れば、これまた何も対策をとらなければ2045年頃にAIが全人類の知能を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)を迎えるとされ、そうなると人間はAIを制御できなくなる(人間の仕事は消滅する)。

 

これは大変なことである。

2045年まではAI機器を大量に保持できる資本家に富が集中し労働者(ホワイトカラーブルーカラー問わず)は貧しくなるし、2045年以降は資本家さえも食い扶持がなくなる。

ベーシックインカム(BI)はAI先進地域である欧米で真剣に議論されているが総失業時代をこれから迎えるのであればBIを支える税金は何処から入ってくるのだろうか(資本家が払う税金だけでは到底賄えないし資本家自体も2045年にはモノを売る相手がいなくなるなら破産してしまうだろう)。

 

悲観的展望を書いたが、世界も日本もそこまでバカではないので、数年単位で何らかの規制を打つだろう(労働者は消費者でもあるのだから)。

しかし人間の労働者に求められるスキルが高度化するのはほぼ確定だ。これまでだって労働者に求められるスキルがかなり上がってきた(所謂コミュ障と呼ばれている人々が就職しにくかったり失業しやすくなっていることからもわかるだろう)。しかし人間はAIとは違うので数年単位で劇的に進化するわけではなくスキルを皆で磨き合ってもやがて頭打ちになる。このミスマッチが未来のブラック労働リスクになる。今ブラックでなくともこれからブラックになる可能性があるのだ。

そうであれば現状のブラック企業問題を放置すれば尚更まずいのは言うまでもないだろう。

消費者の意識改革も求められる。

ブラック企業はワンマン経営者型と消費者起因型がある。

前者は社会的に許されなくなってきているし実際そうした企業では社員が集まらなくなってきているので淘汰されるだろう。

後者が問題である。ブラック企業は実は消費者の「ワガママの加速」が原因との見方がある。周りを見てほしい。居ないだろうか?コンビニや牛丼屋の店員に高いサービスを求めている人達が。価格と価値のバランスを考えるべきである。安いには安いなりの理由が本来あり、そうした店に対して過剰にサービスを求めるのは最終的には労働環境を全体的に悪くする(ブーメラン)。

ある店の客本人も、別のところでは社員側・スタッフ側なのである。そこのところは我々全員で再考する必要がある。

ちなみに私は店を利用するときはレジなどで店員に対して軽く頭を下げているし基本的には文句は言わない。店員が明らかに私より若い人であってもだ。何故なら納得してその店を使っているのに悪態つくのはおかしいと思うし、店員には気持ちよく仕事をしてもらいたいからだ。

 

 

私達全員が、未来に対して責任を持つ。

より良い未来を作るためには個々の意識を再考する必要がある。